子どもの思いや発想を活かした製作~バリエーション豊かなサンドイッチ~
2023/01/21
製作では、過程よりも完成されたものに重きをおかれてしまうという課題があります。堀内・杉本(2005)は、つくらされ、評価される造形表現のあり方に苦痛を感じている子どもは少なくない[1]と述べています。子どもが表現することの楽しさを感じることができるようにするためには、子どもの思いや発想を活かしてつくることができるようにすることが大切です。
題材を設定しなくても、子どもが自由にものづくりを楽しめるのであれば、子どものつくりたいものをつくることができるように、環境を整えることができるようにします。
一方、子どもが、何かをつくりたいけれども、何をつくったらよいかわからないというときや、製作の楽しさを感じるきっかけをつくりたいときには、題材を設定することで、製作の楽しさを感じられるように援助することが必要なこともあります。題材を設定し、一つの題材をテーマに取り組む際にも、子どもの発想を活かすことができるような取り組みにすることで、思いをかたちにする喜び・楽しさを感じることができるようにすることが大切です。
藤田(1976)は、創造活動について、「いつでも独自性と自由性が認められる活動であることをわすれてはなりません。一つ刺激が与えられる機会として課題活動の場合があっても、保育者の意図的な形の模倣に終わらせることのないように、あくまでも創造表現の土台となっていかなければならないのです[2]」と述べています。つまり、題材が決められた製作の取り組みにあたっても、保育者の思い描く完成形を子どもに表現させるのではなく、子どもの思いや発想を活かして表現することができるようにすることが大切なのです。
そこで、子どもの思いや発想を活かすことができる題材の一つとして、「サンドイッチ」の製作を考えました。「サンドイッチ」は、子どもにとって身近な食べ物であることで、イメージがしやすいこと、多様な具材、組み合わせ方があることで、思い思いのサンドイッチをつくることができることから、題材が決まった中でも、子どもの発想を活かしやすいと考えられます。
サンドイッチをつくろう!
準備物
- パン…発泡スチロール板やスポンジなど
- 具財…画用紙、折り紙、フラワーペーパー、ペットボトルのキャップ、タオル生地、ダンボール、緩衝材、フェルトなど(様々な種類・色・大きさの素材を準備したり、汎用性のある素材を用いたりすることで、素材からイメージや発想を膨らませりことができるようにしましょう。)
- ボンド
つくり方
- 「パン」の素材を選んだり、必要に応じて切ったりする・・・子どもが好きな素材を選んだり、好きな形に切ったりできるようにし、選択できる機会を増やし、子どもの思いを活かすことができるようにしましょう。(低年齢の子どもが、切りたくても思うように切ることが難しい場合には、切り線を書くことで、切りやすくなるでしょう)
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- ボンドをつける・・・このときボンドを「バター」や「生クリーム」に見立てるなど、ことばがけや素材の見立てを工夫しながら、「サンドイッチ」づくりの世界観を楽しみながら取り組むことができるようにしましょう。ボンドに、絵の具を混ぜると、「いちごクリーム」や「チョコクリーム」などに見立てることができ、子どもの選択肢の幅やイメージが広がります。
- 「具財」をのせる
具財をのせるたびに”バター”もしくは”生クリーム”(ボンド)をつけましょう。
野菜サンド、フルーツサンドなど、具財によっていろいろなサンドイッチができあがります!素材の選択肢を増やすことで、子どもが自分の思いをもとにつくることができるようにしましょう。
バリエーション豊かなサンドイッチをご紹介!
揚げたて!ボリュームたっぷりカツサンド!
(厚めのダンボールをカツに見立てて、ままごとコーナーにあるフライパンやフライ返し等を使って揚げる工程を楽しむと、より見立てを楽しむことができるのではないでしょうか。)
シンプルにおいしいツナサンド(真ん中)
(フラワーペーパーをふわりとまるめたものをツナに見立ててパンにはさんでいます)
とろけるチーズバーガー
(フェルトをチーズに見立てています)
製作への導入
導入の際にも、突然、製作を投げかけるのではなく、たとえば、「朝サンドイッチ食べてきた」「私はおにぎり食べた!」「僕も食べたい!」などという声をもとに、製作につなげたり、朝食に何を食べたか子どもたちに聞き、その声をもとに製作につなげたり、入れたい具材やどんな材料を使いたいかを子どもたちに聞いたりしながら、子どもの気持ちを製作へとつなげていくことが大切です。
ポイント
製作や絵画では、出来上がりのよしあしに重点をおくのではなく、それぞれの考えや工夫を生かして取り組めるようにすることが大切です。
このサンドイッチづくりでは、具財の見立て方や組み合わせ方次第でいろいろなサンドイッチができるので、子どもの思いや発想を活かして取り組めことができるでしょう。また、同じ工程で、いろいろなサンドイッチをつくることができるので、子どもが見通しをもちながら取り組むことができます。
題材が決められた中での製作でも、以下について配慮することで、子どもの思いや発想を活かしてつくることができると考えられます。
・子どもにとって、身近な題材でイメージがしやすい題材を選択する。
・素材や素材の組み合わせ方に多様性をもたせる。
・様々な種類・色・大きさの素材を準備したり、汎用性のある素材を用いたりして、素材からイメージや発想を膨らませりことができるようにする。
・子どもが選択をする機会を増やす。
・ボンドを「バター」や「生クリーム」に見立てるなど、素材や道具・用具を実際の食材に見立てながらことばがける。
・実際にクッキングを行うときの工程を踏まえて製作をする。
・子どもの声や話し合いをもとに製作につなげたり、素材を準備したりする。
遊びの展開
絵の具で焦げ目をつけて、”ホットサンド”にしても面白いです!また、お店屋さんごっこに展開することで、やりとりにもつながっていくでしょう。
引用文献
[1] 堀内秀雄・杉本亜鈴(2005) 幼児の造形表現における素材・材料の研究:描画材作りによる子どもの表現意欲の高まりについて. 東京成徳短期大学紀要. 38. 57-65
[2] 藤田復生 (1976) 乳幼児期における表現活動. 藤田復生(編). 『幼稚園/保育園 保育全集7 表現力を豊かにする』. 小学館. 16
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